きままにカルテ

映画・本・漫画などの感想を延々とひたすら書き記そうと思ってるブログです。

【鑑定士と顔のない依頼人】 壮大な贋作の中で本物を見つけられるか?

鑑定士と顔のない依頼人 (2013)」という映画の感想です。   

★『鑑定士と顔のない依頼人』 - シネマトゥデイ

 

オススメ度

★★★★★★☆☆☆☆

あれこれと考えたい人にオススメ!

 

あらすじ 

天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺(のこ)した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。

屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。

その調査と共に依頼人の身辺を探る彼は……。

出典:シネマトゥデイ

 

 

ミステリーというより心理ドラマ

公開当時タイトルとキービジュアルを見て「気になる!」と思っていた映画の一つで、今になってようやく動画配信で見ました。

見終わってから予告動画を見たら、受ける印象が全然違いましたね。ミステリーと紹介されていたのでもっと不気味な感じの話かと思っていたけど意外と恋愛基軸のストーリーでイメージと違っていました。

 

友人ビリーを利用して高価美術品を不正入手しコレクションしていた主人公の美術品鑑定師ヴァージル。あるとき顔を出さない依頼人クレアから屋敷の鑑定を頼まれる。
最初は高価と思われる家具に惹かれるが、その内クレアに惹かれていき…最後は周囲の人に騙されまさかの人生転落…。 

 

第一声は「ヒドイ」!

 

この映画を見終えて最初の感想は、一言でいえば「ヒドイ!」です。

むかしウィノナ・ライダー主演の「クルーシブル」という映画を見たあと「なんて腹立たしい映画なんだ!」と思ったけど久々にそれに近い感覚になりましたね…。

 

とはいえ、この映画はラストをどうとらえるかによって作品のイメージがガラッと変わるような気がします。

ラストは、クレアが口にしていたカフェで一人彼女を待つヴァージルのシーン。

アートの中の女性しか愛してこなかったヴァージルが、すべてを失った代わりに本物の愛を手に入れた…という解釈なのでしょうか。

 

個人的に気になる「歯車」の意味 

 

個人的にはラストのあの歯車が気になります。作中に出てくるオートマタの歯車、そしてラストのカフェでの歯車…

過去の有名なオートマタは完璧な答えを口にしたという。

そしてロバート(この人も裏切り者だったわけだけど)の作ったオートマタはかつてヴァージルが口にした「贋作の中にも本物がある」といったセリフを繰り返す…

 

「贋作」というのは、映画全般を通して見ればヴァージルの人生とも捉えられるのかな?と思ったり…

なにしろ高価な美術品を不正入手してコレクションし、アートの中の女性だけを愛してきたわけですから…

 

最終的に、友人ビリーにもロバートにもクレアにさえ騙されていたわけで、すべてはヴァージルを騙す為の壮大な茶番といえますよね。

しかしそんな「茶番という贋作」の中にも「本物」があるというなら、それはヴァージルのクレアへの愛ですよね。全部つくりものだったのに、クレアを好きになってしまったところだけは本当なわけだから…

 

偽物の「愛」と本物の「愛」

 

個人的にはクレアの台詞が気になる…!

彼女はヴァージルのコレクションを見て「この先どんなことがあってもあなたを愛してる」と言いました。彼女はヴァージルを騙していることをわかっているわけだから、ここでいう「この先」はコレクションを盗んでトンズラすることですよね。

ひょっとしたら、クレアを演じていたこの女性は本当にヴァージルのことを愛してたんじゃないかな?って思ったり…そうだったらもっと救いがあるのになぁと思います。

クレアが誰かとしていた最初の電話はたぶん本物の彼女自身だろうし、そこで口にしていた「そんなに老人じゃない」みたいな言葉は好意的にとれるかな?と思うんですが…

 

それにしてもヴァージルを陥れた友人ビリーの執念がすごい!まさに復讐劇というか…。

ビリーは冒頭からずっと「お前が俺の絵の価値を認めてたら絶対売れてた」的なことを言っていますよね。

もしヴァージルが少し手を貸してくれたらビリーは幸せになれたかもしれないのに、その余地はなく、逆にヴァージルの幸せのために不正に手を染めているわけですから…

 

でもこのビリーの恨みが復讐劇にまでつながったのは、たぶんヴァージルがビリーを信用していなかったからでしょうね。クレアにしたみたいに、孤児院で育って…という過去を共有できるくらいの信頼感があればこんなことにはならなかったんだろうなぁと…

そこがまた、偽物の友情というか、まさに贋作といったかんじで胸にグサッときました。

 

そういえば数少ない味方である秘書が、妻との生活について「競売みたいなものです。最上の出品物なのか…」と言っていましたね。愛は芸術品なんでしょうか。

 

予想していた内容とはだいぶ違ったけど、見終えてからもう一度考えてみると「ああ、なるほど」というところがいろいろあるような気がします。
これは、見た後にアレコレ考えるのが楽しいタイプの映画ですね!